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鍵盤幅の問題だけではなく

更新日:6月10日

 東京ストレットピアノが開業してもうすぐ2か月になります。ご来店されたお客様の感想を集約すると

・一生に一度でいいからこんなピアノを弾いてみたかった

・確かにオクターブが弾きやすくなったり9度や10度の和音が楽々弾けるけど、鍵盤の位置を確認しないとミスタッチをしてしまう。

・鍵盤が細くなってもペダルや鍵盤の重さは変わらない。

こんなところでしょうか。


 PASK財団のホームページやyoutubeチャンネルを見ると、鍵盤サイズが変われば表現力、ケガの可能性の軽減など、すべての問題が解決するような印象を持たれるかもしれません。ですが、ピアノの上達には鍵盤サイズ以前に、毎日の適切な量の反復練習、中高年のピアノ弾きなら特に指の筋力の維持などの努力が必要になってきます。


 実は私は電子ピアノのヘビーユーザーでしたので、細幅鍵盤ピアノを人生の相棒として迎えてから、実は鍵盤サイズの問題と同じくらい電子ピアノとアコースティックピアノの違いは大きいのではないかと考えるようになりました。

 「電子ピアノでいくら練習しても、アコースティックピアノではうまく弾けない」と聞いたことはありませんか。  

 アコースティックピアノでは鍵盤を押すエネルギーの一部でハンマーを動かし、弦をたたくことで音を出します。

 電子ピアノでは鍵盤を押す強さをセンサーで感知して音を出します。鍵盤をなでるように弾けば弱い音が出ます。一方、大きい音を出すのはスピーカーの出力性能が上限になります。性能の良い電子ピアノなら鍵盤タッチの感度を変えることで筋力の弱い人でも音を出せるようになります。

 アコースティックピアノでは人の指では直接動かせないハンマーをコントロールすることで音の強弱をつけなければなりません。アコースティックピアノは電子ピアノより、弱い音を美しく響かせるのが難しいのです。

 どちらがいいか、という問題ではなく、猫と猫型ロボットの違いなのだと思います。「電子ピアノでいくら練習してもアコースティックピアノでは上手くならない」と言っている人も電子ピアノを買うなとは言いませんよね。


 そもそも細幅鍵盤は、ほとんどの人は実物を触ったことない状況です。ピアノ屋さんに行ってもまれに中古の細幅鍵盤ピアノが入荷するぐらいで滅多に試弾もできません。鍵盤サイズの問題を語れるようになるには、誰もが簡単に細幅鍵盤ピアノを弾ける環境になる必要がありますね。そのころには東京ストレットピアノの役割は変わっていくのでしょうか。


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